ドイツ駐留の基地は、朝になるたびに同じ音で目を覚ます。ラッパのけたたましい合図、仲間たちの「おい起きろよ、また地獄の一日の始まりだぜ」という眠そうな声、そして冷えた空気。俺――ジョニー・テイラー上等兵は、ベッドの上で伸びをしながら思った。 https://youtu.be/nWUah3a7zpM 「今日こそは、きっといい日になる……はずだ」 口にした瞬間、自分で苦笑した。毎朝そう言いながら、毎日同じ訓練と点呼と警備で終わるのが現実だ。 ただ、それでも少しだけ期待したくなる理由があった。 基地の正門を抜けた先の街――青い瓦屋根と石畳の路地が美しいその場所で、俺は偶然出会ってしまったのだ。金髪を三つ編みにまとめ、青いワンピースをふわりと揺らすドイツ娘。名前はリリー。笑うと小さなえくぼができる。 その笑顔が、俺の兵隊生活の“希望”になっていた。 「おいジョニー、今日の任務は昼までだ。午後は自由時間らしいぞ」 同じ部隊のマイクが肩を叩いてくる。自由時間。それはこの基地では宝のように貴重な言葉だ。 「本当か? じゃあ俺は街へ行く」 「またリリーに会いに行くんだろ? 惚れた弱みってやつだな!」 マイクが笑う。俺は照れ隠しにヘルメットを深く被った。 午前の訓練が終わると、俺は急いで制服を整え、正門へ向かった。監視兵に敬礼しながら足早に街へ出る。石畳を踏むたび、心臓が跳ねた。 彼女がいるだろう店――パン屋の木の扉を押す。 チリン、とベルが鳴り、甘いバターの香りがふわっと広がった。 「ジョニー!」 カウンターの向こうで、リリーが目を丸くして笑った。 その声を聞いただけで、今日ここへ来るまでの重たい気分がすべて吹き飛んだ。 「今日は自由時間なの。よかったら外を歩かない?」 彼女の提案に、俺は思わず背筋を伸ばした。 「もちろんさ、君がよければ」 店を出て、小さな川沿いの道を並んで歩く。風に揺れる彼女のワンピースが、まるで青い空のように軽やかだ。 「兵隊さんの生活って大変?」 「まぁ、毎日似たようなものさ。自由は少ないし、任務は厳しいし……でも、君に会えると思うと頑張れる」 言った瞬間、彼女は頬を赤くした。 「そんなこと言う人、初めて」 その可愛らしい仕草に、俺の胸の奥が熱くなる。 だが、幸せな時間は長くは続かなかった。 基地から...